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掘り起こした話。その一

ホームページのファイルを見てたら(アップロード相変らず不明)、こんなの出てきました。
大昔、素敵サイト様(いまは閉鎖)の、イラストを拝見して、触発されて書いたものです。
これを手直ししたものを、その方にはさしあげたのですが・・・分かる方はぴんとくるかも。
HP内見てもらったらわかると思います。
もうだいぶ時間も経ったし、その方に差し上げたのは書き直したものなので、よいかな、と思って、あげました。
こんな風に書きかけとか昔さげたものとかを、ぼちぼちやってこうと思います。


「こ、更新がない代わりじゃないからね!(ツンデレ風に)」

しかし、当時の言い訳が可笑しい。


「どこにクリスマスがあるのか百字以内で検証してみよ(配点:3)
という気分です。ジングルベルが遠い証拠やねえ。
少女が女性らしい仕草をするのって、ちょっとどきっとするんだよね、という話。

実は。
●●●様のサイトの素敵なハク様見て思いついた話・・・・・というのは内緒の話。
どこがやねん、というキツイツッコミはカンベンしてつかあさい。」

・・・・・・いい大人の言うことか。
ってこれから数年たっても変わってない進歩のなさに愕然。おうまいがー。


まあ、お暇つぶしにでも、読んでください。
当時のままの文章のままなのは堪忍を。










きらめき


少女が変わったと感じるのは、ほんの些細なこと。
たとえばそれは、



時折僅かに漏らす溜息だったり、
静かに瞳を伏せる仕草だったり、
何気なく遠くを見つめたときの表情だったり。


そう、雪の結晶が、同じものでありながら幾つもの形をもつように。
ただその小ささ故に、同じようにしか見えないのと同じように、ほんの些細なこと。
しかしその変化は決して些細なものではないと・・・・・・彼は知っていた。




この頃荻野千尋がかわった、と。
帰り支度をする姿を横目に見ながら彼は思った。
彼女は隣の席に座るクラスメイトで、軽口を叩き合ったりする気安い友人の一人・・・だった。
いつからか、平凡な普通の少女でしかなかった千尋の印象が変わった。
外見が特に派手になったとか、性格が激変したとか、そう言うたぐいの変化ではない。
どこが?と聞かれるとこちらも言葉に詰まってしまうような・・・そんな微妙な変化。
それでも確実に彼女は変わったのだ。
「じゃあ、帰るね」
微笑んで立ち上がるその表情は、かつての彼女では決してない。
「ま、待てよ」
思わず呼び止めたものの、次になんと言って良いか分からず黙り込んだ。
しばらくの沈黙のあと、それを破るように千尋が口を開いた。
「用が無いなら、私帰りたいんだけど・・・人と待ち合わせしてるから」
「あ、ああ。ごめん」
「じゃあ、またね」
こちらを振り返って手を振る彼女を見て、彼は突然理解した。
 ああ、綺麗になったんだ、と。


・・・・・・きっと、恋をしているんだろうと。




とうとう、雪が降ってきた。
息を弾ませながら、待ち合わせの場所まで走ってきて、千尋はその手前で一度足を止める。
鏡を取り出して乱れた前髪を弄り、制服のリボンのゆがみを直し。おかしなところがないかチェックして。
よし、と。気合を入れる。
本当は待ち合わせの時間にはまだ遠い。
きっと彼女の待ち人はまだ来ていないだろう・・・それでもいい。それでも、待ちたいのだ。
そう思って一歩踏み出したときだった。


目の前の光景に、千尋は思わず言葉を失った。
視線の先にいたのは、白い雪の中で舞う白皙の少年。
降りしきる雪の中で、尚白く見えたのは纏った狩衣の白さゆえか、それとも氷のような美貌のせいか。
手に持った扇の赤が白い世界に映え、幻想的な美しさを作り出し、千尋はそれに見入ってしまった。
 それからどれだけの時が経ったのか。
「千尋?」
と、彼が呼びかけるまで、千尋は彼が近付いてきたことにさえ、気付かなかった。
彼より頭一つ低い千尋の、肩や頭に積もった雪をはらいながら、彼は少し厳しい表情を作る。
「まだ時間には早いはずだが?こんなに冷たくなって・・・風邪など引いたらどうするつもりだい?」
千尋の手のひらを掴んで、声音が固くなる。
「だって」
振り仰いで千尋は、湖面のように静かな翡翠の双眸を見つめた。
「だって、早くハクに会いたかったから・・・遅れたらそれだけ会える時間が少なくなると思って・・・」
時間に遅れて、彼に逢える時間がそれだけ少なくなるのであれば。
それならば少し寒い思いをしても、こうして待っているほうが、ましだもの。
そう反論したものの、返ってきたのは恐ろしいほどの沈黙。
先程とは違うそれに耐えかねて、千尋は俯いてしまった。




やがて聞こえた苦笑に、千尋はそっと頭上をうかがった。
彼は笑っているような、怒っているような複雑な表情で千尋を見下ろしている。
「参ったね・・・千尋、そう言われたら私は怒ることが出来ない」
言いながらハクは千尋を抱き寄せた。
「千尋、決して他の誰かの前でそんな表情をしないで」
「え?どんな?そんなにヘンな顔だった?」
腕の中から顔をあげて、千尋は頬を両手で覆う。
「いや。本当に千尋は綺麗になった」
「ええ?!そ、そ、そんなの、ハクの方がよっぽど綺麗だよ!そうだ、さ、さっきハク踊ってたでしょ?私見惚れちゃったもん!あ、あれ、何?何かで踊るの?!」
照れた時に口数が急に増えるのは、千尋の癖。くすり、と笑ってハクは抱きしめた腕に力を込める。
今日、彼女に最初に触れて感じたのは、雪の冷たさと、纏わりついた思いの残滓。
それはかつて聞いた事のある級友の物だ。きっと彼女に恋しているのだろう。
笑顔のまま、それを跡形も無く消し去る・・・・・・雪の中に。
雪は何もかもを白く覆い尽くす。
美しい思いも。
醜い嫉妬も。
皆、同じように、白く白く。




「・・・・・・私が綺麗になったって言うんなら、それはハクのせいだよ」
目を閉じて、千尋はハクの胸にもたれかかる。
「ハクが好きだから・・・きっとそのせい」
頬を染めて呟く表情は、先程と同じ「女性」を感じさせるもので・・・・・・ハクは少しどきり、としたが。
「なーんてね!あははっ、やだ、私ったら何言ってるのってね!!あはははっ」
次の瞬間には、真っ赤になって頭を掻いている。そこには先程までの雰囲気は微塵も感じられない。
まるで、雪の結晶のようだ。
同じように見えて、幾つもの形があるように、様々なきらめきをもつように。
千尋という少女は、様々な表情を持っているのだ。一体後幾つハクの知らない表情が在るのだろうか。
「これ以上・・・綺麗にならないで」
ごく小さな我侭は、幸いにも千尋の耳には入らなかったようだ。
いつの間にか暗くなった空から降る雪を見つめながら、何気なく千尋は呟く。
「雪、止まないね」
「そうだね」
「積もるかな」
「さて、どうだろう」
そのまま黙って、ただ降る雪を見つめていた。


雪が止んだら、また一つ、新しい千尋を見つけることができるだろう。
by mak1756 | 2012-12-10 00:03 | 掘り起こした話


日々思うことをつらつらと。


by mak1756

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