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ぬかるみの下

 かごめ、かごめ。

かごのなーかのとーりぃはぁ、

いついつでーやぁるぅ・・・。

いついつでらりょうかぁ。



ねえ、あなたが僕の後ろの正面に立ってくれなかったの?

ねえ、美しい人。

どうして、あなたは僕を見てくれないの?

・・・どうして、僕を、見捨てたの・・・?









 「もし、そこのお嬢さん」

 おねえさまに言いつけられたお使いの帰り道を、持ち物の重さにふらり、ふらり、覚束ない足取りで歩いていると、蓮っ葉な声が背後から千尋を呼んだ。

最初は自分のことだとは気づかずに、そのままふらり、ふらり歩いていたが、

「いやだねえ、あんただよ、髪を一つに結い上げたお嬢さん。ここにはあんたとあたししかいないじゃあないか」

びっくりして振り返ると、パラソルをさした着物姿の若い女が一人。年は千尋とそうかわらないように見える。

「どなたですか?」

女は縞の着物に絣の帯をきゅっと締め、大きく抜いた襟が婀娜だ。黒々とした髪はそのまま背に流れ、紅を刷いた唇がにい、とこちらを見て笑う。

 きれいな、ひと。

思わず惚けてしまった千尋に、女は構わずパラソルをくるり、とまわした。

「お嬢さん、油屋のひとだろう?あたしもあそこに行くんでねえ、ついでだから一つ荷物をもってやろうと思ってさ」

「い、いいえ。お客様にそんなことさせるわけには行きません!!」

それに女の手首は千尋のそれよりも随分と細く、頼りない。

慌てて首を振って千尋は申し出を辞退したが、しかし女はまた笑って

「構やあしないよ。それにあたしは客でもない」

と千尋から荷物を奪い取るとすいすいと歩き出してゆく。

「わ、私が怒られます!!」

千尋は女の背中を追ったが女は意外に足が速く、小走りについて行くのが精一杯。

「いいかい、お嬢さん。油屋のものにはあんたがあたしから無理矢理親切を押し付けられたって言うんだよ?」

「え・・・?」

女の言葉が理解できずに千尋は目の前の背中を見上げた。

ぴたり、と女の足がとまる。

「はい、着いた」

いつの間にか油屋の前だった。女は持っていた荷物を千尋に返すときょろ、とあたりを伺っている。何かを探しているのだろう。お節介根性にくすぐられて千尋は女に訊いた。

「あの何かお探しですか?私でよかったらお手伝いします!」

「そう言ってくれると助かるよ。こちらの帳簿の責任者のハク様はいるかい?」

ハク?

千尋の心臓が音を立ててはねた。

こんな綺麗なひとがハクに何の用・・・?

千尋はハクを呼ぶべきか、迷った。

by mak1756 | 2012-09-19 00:00 | ハクセン2


日々思うことをつらつらと。


by mak1756

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