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花嫁 5

「後ろの正面、だあれ?」



耳に残る、古い童謡。

そして不可思議な夢の中で、少年が私に囁いた言葉。

「人間は自分にとって都合のいいものを神と呼び、悪いものを鬼と言う。

でも知っているかい?神とは本来残酷なものなんだよ。

そう、そなたは賢いね。鬼と呼ばれるものも又神だということさ」









ならば、あなたは?





振り向いた、後ろの正面。

それは

・・・・・・神?

それとも、

・・・・・・・・・・鬼?









 まず目に入ったのは、深い翠の瞳。

次いでその造作の美しさが千尋の目を奪った。

歩くたびにさらさらと、長く真っ直ぐな黒髪が肩を滑って落ちてゆく。

目が合うと、すっと瞳が細められ、唇に笑みが浮かんだ。

 男の人、なのだろうか。

先ほどの女とは違い、深い群青の狩衣を纏っていることから千尋はそう推測する。

ただその白い面は、一見しただけでは男女を判じることが出来ぬ。

えもいわれぬ妖しい美しさに彩られて、見るものを惑わすのだ。

人が得ることは無いであろう、人ではない故に得たのであろう凄絶な美しさ。

本来なら人が出会うことは無いであろう、異形。

・・・こわい。

背を這う、冷たい悪寒に千尋は身震いする。

しかし有無を言わさぬ力が、無理矢理にも千尋を目の前の青年に釘付けにした。

「どこか悪いところは、ない?」

「あ、はい」

思いのほか低い声のいたわりに遠慮がちに答えると、青年はくつり、と笑い千尋の傍らに腰を下ろした。

「!!」

すい、と伸ばされた白い指先が頬に触れ、千尋は身を強張らせる。構わず、むしろ愉しげに、そのまま冷たい指先は頬を撫ぜ、唇に触れた。

「震えているね。私がこわい?」

「あ、あの!!あなたは誰なんですか?ここは、どこ?」

青年の言葉を遮るように、千尋は問いの言葉を投げつけた。彼を知っているような気がしたが、それは己の勘違いであったと千尋は思い直す。もし出会っていたのなら、こんなにも美しい存在を忘れられる筈も無いから。

「私を忘れたのかい?」

その声に失望の色は無い。ただ確認するように笑うだけだ。

なんだか馬鹿にされたような気分になって、千尋は苛立ちもあらわに頬に添えられた手を払った。

「忘れたもなにも、あなたとは初対面でしょ!!ここはどこなのよ!」

「・・・首。痛くはない?」

どうして?

逆に問い返してきたその言葉に大きく目を見開き、思わず首筋に手をやった。

「何で知っているのか、という顔だね。当然のことさ、私は全て知っているよ・・・そなたのことなら、何もかも」

「な、にを」

言ってるの、と言おうとして唇が凍りついた。

薄く笑う青年の、その目を。

こちらを見て笑うその、視線を。

・・・・・・知ってる。

この視線は、自分を監視する視線、だ。

独占欲にまみれたこの視線を、いつも自分は感じていた。

「いやぁっ!!」

恐怖のあまり咄嗟に逃げ出そうと立ち上がったが、青年の腕がそれよりも早く千尋を捕らえ、己の腕に抱きこんだ。

「離して!!」

「振り返ってはならぬ、と私は言ったはずだよ?千尋」

名を呼ばれると、身体に電流が走るような衝撃を感じ、手足の力が抜けてゆく。

「さあ、私の花嫁。祝言を始めようか」

囁きの意味がわからず、怪訝な表情を浮かべた乙女は、すぐにその意味を知らされることになる。









 何が起こっているのだろうか。

しばし呆然とした後、唇を割って入ったぬるりとした感触で、自分の身に起こっている出来事をようやく悟った。しかし時はすでに遅く、腰に回された右手が帯を解き、左手が緩くなった小袖の袷を開いていた。

「何で・・・っ」

眦に浮かんだ涙さえ舐め取られる。どんな抵抗も無駄だと言わんばかりに。

抗う腕を解いた腰紐で戒められ、布団の上に押し倒された。

はだけた胸元からこぼれた双果を鷲掴みにされ、千尋は眉をしかめる。

「いたっ」

青年の手のひらに丁度収まる大きさのそれは、強弱をつけてもまれると千尋の意思に反して震えながら張ってゆき、その頂きを口に含んで舌で転がす度に細い肢体が震える。

初々しい反応を楽しみながら、青年は成熟に近づきつつあるまろやかな肢体を堪能し始めた。

「誰、か、助けて!!誰かぁ!!」

必死で声を上げるが、人が来る気配は全く無い。

やがて絶望に染まる瞳に、青年の笑みが一層冷ややかなものになる。

 「ひ・・・あっ」

執拗な愛撫に、固く噛み締めていた唇から堪えきれぬ細い喘ぎが途切れ途切れに漏れ始めた。

その声をもっと聞きたくて、青年は右手を千尋の下肢へと伸ばし、熱く湿った内股をさすり上げる。

ぞっとする感触に千尋は足を閉じたくて仕方がなかったが、足を割って入った青年の身体がそれを阻んでいた。

しばらく内股を彷徨っていた手のひらが、やがて熱く潤った秘所に触れた。

 「いや!」

拒絶の言葉さえ、青年を煽る要因に過ぎない。

淡い繁みの奥、誰にも触れさせた事のない場所を探られて、千尋はたまらず嗚咽を漏らす。

「やだ・・・止めて。お願い、お願いだから・・・」

「大丈夫。すぐに良くなる」

懇願は空しく、酷薄な笑みにかき消されて。

「んんっ」

花弁を弄んでいた白く長い優美な指がつぷ、と千尋の中に沈んだ。





 気持ち、悪い。

 やめて、怖い!

 やだ、いやだ、いや!!





指が中で動く度にとろり、と蜜が溢れ、足を濡らす。

執拗に自分の中を探る異物感が、やがて違うものへ変化してゆくのに千尋は戦慄した。





 おかしい。私、嫌なのに、嫌なのに!!





「くふっ・・・ぅ」

「ほら、良くなってきた」

鼻を抜けた甘い喘ぎに青年は笑い、千尋の羞恥を煽る。

「あっ」

「ふうん、ここ?」

「ひっ」

増やされた指が千尋の中を丹念に調べ上げ、悦楽へと導き、強固だった理性のたがを徐々に外してゆく。

巧みな導きに、身体は心よりも先に快楽に従い、男を受け入れようと大量の蜜を溢れさせた。

青年はそれを確かめると指を引き抜き、千尋の足を開く。

「千尋。いくよ?」

一方的な宣言とともに、指より熱く確かなものが、いきなり千尋の中に挿入された。

「い・・・!!いた・・・い!」

身体を切り裂かれるような痛みに耐え切れず、千尋は悲鳴を上げた。

それ、は千尋の蜜に助けられ、狭い道を切り開くように無理矢理に千尋を侵してゆく。

「やああっ!!」

「狭いな」

いささか苦しげに吐息をついて、青年は更に奥深くへと、一気に腰を進める。

「か・・・はっ・・・」

ずん、と身体に楔を打ち込まれたような衝撃で、千尋は一瞬息が出来なかった。





 痛い、痛い!!苦しい、助けて!





それだけでも千尋には苦痛なのに、青年は彼女の中で動き始めたのだ。

「や、動か、ないで!!お願い!!」

「苦しいのは、最初だけだから。我慢して」

「やあ・・・っあっ」

破瓜の痛みさえ引かぬ少女の身体を浅く、深く、ゆっくり、時折性急に青年が貫く。

「あ、あ、・・・はぁ、あ・・・」

容赦ない攻め立てに千尋の唇から意味のない言葉が漏れ、交わりによって奏でられる淫靡な水音が耳を犯す。

「や、あ、あ・・・」





 これは夢だ。

 悪い、夢だ。

 早く目を覚まさなくちゃ・・・覚めて!





「ク・・・千尋!!」

「ひ、あああああ!!」

一層強い衝撃の後、千尋の中で青年が弾ける。

熱くほとばしる精を享けながら、千尋は意識を手放した。

by mak1756 | 2012-09-17 00:04 | ハクセン


日々思うことをつらつらと。


by mak1756

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